医学の軌跡

2024年7月11日

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先日,❝シリラート医学博物館❞へ行ってきました。
この博物館は,タイ王室と深い縁を持ち,100年以上の歴史を誇るシリラート病院の中に,病理学の父とも称されるアラー·G·エリス博士によって創設されました。彼の遺志を継ぎ,病気に冒された患者たちの臓器や組織が,後世の医学教育のために収集され,展示されています。

病理学博物館では,がんや心臓病など,タイ人の主要な死因を示す展示がされており,それらの病態を通じて,予防と治療の重要性を訴えています。特に心臓病に関するビデオ記録は,タイ国王プミポン·アドゥンヤデート陛下によって提供されたもので,その価値は計り知れません。その他にもシャムの双生児と呼ばれる肉体が一部結合した双子の遺体や,事故により損傷した胎児の標本もあり,生命の脆弱さと強さを同時に感じさせます。
法医学博物館では,犯罪や事故に関わり法医学による鑑定が必要だった遺体が展示され,1950年代の殺人犯「Si Quey(シーウィー)」の遺体や,その他の重要犯罪者の防腐処理されたミイラが,犯罪の重大性を示すために裁判所の判断により永遠に展示されています。
寄生虫博物館では,寄生虫に気をつける必要のある食品の例や,危険な虫の模型が展示されていました。
また,シリラート医学博物館は,解剖学博物館やSiriraj Bimuksthan Museumといった他の博物館も含んでおり,病院や医学の歴史について学ぶことができます。特に解剖学博物館では,人体を色々な角度から切断したホルマリン漬けの標本や樹脂で固めた標本が展示されています。

ここは一般的な観光地とは異なり, 私たち医療従事者にとって興味深い学びの場であり,一般の人々にとっては生命の神秘を考える機会を提供しています。法医学や解剖学に関する展示が豊富で,多くの思索を促します。
私自身,病理学研究室での経験と獣医師としての実務を通じて,病気と向き合う日々の中で,この展示は大変勉強になりました。病理学は単なる学問ではなく,生命を救うための実践的な知識であることを再認識させられました。シリラート医学博物館は,医学の進歩と共に歩む貴重な教育の場であり,訪れるすべての人々に,生命の尊厳と医学の奥深さを伝え続けるでしょう。

 三村(晃)