関門海峡に映る嘗ての繁栄

2024年2月23日

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先日,門司港へ行ってきました。

関門海峡の水平線に架かる橋と対岸の街が背景となり,門司港に足を踏み入れると,時空を超えた旅に出たかのような錯覚にとらわれます。明治から昭和初期にかけて,関門海峡の玄関口として煌びやかな栄華を極めたこの地には,今もなお,レトロな建築物が数多く残されています。それらは,かつての繁栄を物語る歴史的遺産であり,現代の人々に深い懐かしさと異国情緒を呼び起こします。歴史の重みと新しさの輝きが交錯する,唯一無二の風景が広がっています。

私は,まず門司港駅に向かいました。

重要文化財に指定された駅舎は,ネオ·ルネサンス様式の優美な木造建築で,大正時代の華やかさと格式を今に伝えています。 駅舎の内部には,青銅製の手水鉢や大理石の洗面所,真鍮巻きの柱など,当時の最先端の設備や装飾が見られます。また,昔の列車や切符,時刻表などが展示されており,鉄道の歴史に思いを馳せることができます。駅のプラットホームからは,関門橋や関門トンネルの入り口が見え,九州と本州を結ぶ重要な交通の要所であることを認識させられます。

駅から少し歩くと,門司港レトロ地区に入ります。ここでは,旧門司税関や旧門司三井倶楽部など,貿易港として栄えた時代の建築物が保存されています。それぞれの建物には,異国情緒あふれるデザインや装飾が施されており,見る者の目を惹きます。また,それぞれの建物には,歴史的な出来事や人物のエピソードが紐づいており,読み入ることができます。例えば,旧門司税関では,日本で初めてラジオ放送が行われたことがあり,その様子を再現した展示があります。旧門司三井倶楽部では,アインシュタイン夫妻が滞在したことがあり,その部屋は今でも見学することができます。
私はこの旧門司三井倶楽部でランチを楽しむことにしました。

この建物は,大正時代に三井物産の社交倶楽部として建てられたもので,国の重要文化財に指定されています。内装はアールデコ調の装飾やステンドグラスが優美で,高級感が漂っています。レストランでは,関門のとらふく料理や活造りなど,新鮮な魚介の創作料理を堪能しました。味はもちろん,盛り付けや器も美しく,目でも舌でも楽しめるランチでした。また,先にも述べたアインシュタイン博士が宿泊した部屋は,当時の寝室や居間がそのままに復元されており,博士の直筆サイン入りの扁額も展示されていました。博士が日本で最も長く滞在した門司港で,どんな思いを抱いたのかを想像しながら,歴史の一端に触れることができました。

時代の流れに抗いながら,その魅力を失わない港町。門司港レトロは,昔と今が共存する魅力的な街です。この街を訪れると,関門海峡の自然や歴史,文化,産業などに触れることができます。

 

三村(晃)