芸術の旅路、新たなる出発

2024年1月28日

Pocket

年度末に差し掛かり,多彩な芸術系大学の卒業生たちが,創造性と技術の結晶を披露する展覧会が続々と開催されています。 今週は,第16回文化ファッション大学院大学ファッションウィーク(BFGU FW)と第72回 東京藝術大学 卒業・修了作品展に足を運んできました。

BFGU FWは,次代のファッションビジネスの方向性を示唆する,新たな知財創造ビジネスの可能性を見出す場として位置づけられています。ファッションショー,作品展示,研究発表など,多様性の時代においてクリエイション,テクノロジー,ビジネスの視点から新しいファッション価値を提案する内容に満ちていました。
私が最も感銘を受けたのは,ファッションデザインコースとファッションテクノロジーコースの修了ショーです。選抜された院生たちが,自らのコンセプトに基づいた作品をコレクション形式で披露しました。スタイリング,舞台演出,音響,進行なども院生たちが手掛けており,個性豊かで華やかなショーを展開しました。また,チェコ国立プラハ応用美術大学の学生たちとのジョイントショーも行われ,異なる文化や感性が交わる素晴らしいコラボレーションを見ることができました。

作品展示では,ファッションデザインコースの院生たちが,各自の作品を10~15体仕上げ,その一部を展示しました。割り当てられたスペースをどう演出するのか各自のアイデアによるため,装飾,ライティング,レイアウトなども多種多様でした。ファッションテクノロジーコースの院生たちは,テクノロジーを活用したデザインを商品化に発展させることをテーマに,調査,試作,検証を行い,作品制作,ポートフォリオを作成し,展示しました。テクノロジーとファッションの融合による革新的な作品には驚嘆しました。
研究発表では,ファッション経営管理コースの院生たちが,ファッションマネジメント分野に関するテーマをそれぞれ設定し,修了研究プロジェクトとして論文形式や事業計画書形式で執筆した内容をプレゼンテーションしました。ファッション業界の現状や課題,将来の展望などについて,深い分析と独創的な提案がなされており,非常に興味深く聞き入りました。

次に,第72回 東京藝術大学 卒業・修了作品展では,日本の美術教育の最高峰と謳われる同大学の全科の学生たちが,学びの集大成として制作した作品が陳列されていました。多彩な表現手法や主題が息づく作品群に目を奪われるとともに,芸術の躍動を感じました。
作品の傍らには,制作した学生たちが立っており,作品の意図や背景を熱烈に語ってくれました。作品と作者の顔が見えることで,作品に対する理解や共感が深まり,また,学生たちの情熱や創造力が伝わってきて,私も心が揺さぶられました。

多岐にわたる創作のなかでも,私の心を捉えたのは彫刻の作品群でした。木や石,金属やガラスといった様々な素材が,人間や動物,自然や抽象といったモチーフに生命を吹き込んでいました。中でも印象的だったのは,作者自身が作品の一部となる“生きた彫刻”でした。その驚異的なパフォーマンスには息を呑むばかりで,心に深く刻まれる感動を覚えました。彫刻の表現力の深さと可能性の広さに感嘆しました。

これらの展覧会を通して,私は未来の芸術家たちの才能と可能性に感嘆しました。彼らは,自分の作品を通して,社会や文化,自然や人間など,様々なテーマに挑戦し,表現し,議論しようとしています。彼らは,美術の伝統や技法を継承しながらも,新しい素材やメディア,コンセプトを探求し,創造し,革新しようとしています。彼らは,美術の世界だけでなく,私たちの生活や社会にも影響を与える,優れた芸術家になることでしょう。私は,彼らの今後の活躍を応援し,尊敬し,期待しています。

2月23日より,“2023年度第47回 東京五美術大学 連合卒業・修了制作展”が国立新美術館にて催されます。毎年足を運んでいましたが,今年は都合が悪く鑑賞することは叶わなさそうです。学生たちの才気や個性が結晶した作品を楽しめる貴重な機会ですので,ご都合のつく方は是非お出かけください。

三村(晃)