航空宇宙技術史の宝庫

2023年7月10日

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日本最大級の航空宇宙の専門博物館である“岐阜かかみがはら航空宇宙博物館”へ行ってきました。
ここでは,人類の空への挑戦と探究の歴史を,多彩な実機や模型,映像やシミュレーターなどで体験することができます。
周辺には日本最古の飛行場である岐阜基地や,航空機製造工場の一つである川崎重工業岐阜工場があります。
私はこの博物館を訪れて,多くの感動と学びを得ることができました。

航空エリアでは,ライト兄弟の飛行機から始まり,各務原で製造された戦闘機や実験機など,日本の航空技術の発展の足跡を辿ることができました。
中でも,圧倒的な存在感を放っていたのは,唯一現存する三式戦闘機二型「飛燕」でした。これは,大日本帝国陸軍の液冷式戦闘機であり,川崎航空機が開発·製造した傑作機です。設計主務者は土井武夫で,ドイツのDB 601エンジンを国産化したハ40を搭載しています。防弾·武装のない試作機は最高速度590 km/hを記録し,当時の日本で唯一の量産液冷戦闘機として制式採用されました。主翼より後部の機体下部にラジエーター·ダクトを配置し,機体の空気抵抗低減と冷却効率の両立を図っています。搭載エンジンのハ40は生産·整備ともに困難が多く,常に故障に苦しめられた戦闘機としても知られています。

飛燕の外観は,水冷エンジン装備機特有の細身な形状を持ち,左右一体型の主翼と胴体の接合法,ラジエーター配置,主脚構造などが独自の工夫が施されています。その流麗なスタイルは,あたかも青空を切り裂く燕にも似ており,その美しさから飛燕と名付けられました。連合軍におけるコードネームはTonyで,和製メッサーとも呼ばれました。飛燕は,太平洋戦争においてB29爆撃機の迎撃や特攻などに奮闘しましたが,終戦時にはほとんどが破壊され,この一機のみが現存しています。

宇宙エリアでは,ロケットや人工衛星,宇宙探査機などが展示がされており,日本の宇宙開発の歴史や最新の技術を学ぶことができました。目玉の展示は,国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」の実物大模型です。

「きぼう」は,宇宙飛行士が長期間活動できる有人施設で,微小重力や高真空といった特殊な環境を利用して,さまざまな分野の研究や観測が行われています。今回はその実物大模型の内部に入って,宇宙飛行士の生活や実験の様子を想像することができました。生物系の学部出身の私にとっては,宇宙環境が生命現象に及ぼす影響や,宇宙生物学の発展など非常に興味深かったです。また,「きぼう」は,日本が宇宙ステーション計画に参加することで得た権利と責任の象徴でもあります。宇宙ステーションの運用や管理に関わることで,日本は国際協力に貢献し,宇宙開発の技術や知識を習得しています。このように,「きぼう」は,日本の宇宙科学技術の粋を集めた,世界に誇れる施設なのです。

私はこの博物館を訪れて,航空宇宙に対する興味や敬意を深めることができました。航空宇宙に携わる技術者や研究者の方々の努力や情熱に感謝したいと思いました。

 

三村(晃)